2月3日に東京・目黒の目黒雅叙園『舞扇』で行われた、2010年の地方競馬で活躍した厩舎関係者を表彰する「NARグランプリ2010」。JRAの強豪相手に帝王賞を圧勝したフリオーソ(船橋・川島正行厩舎)が07年、08年に続き3度目の年度代表馬に選ばれ、ファン、関係者約300人の出席のもと盛大に行われた。


表彰馬の部門
 受賞馬
・年度代表馬、サラブレッド4歳以上最優秀馬)  フリオーソ(船橋・川島正行厩舎)
・2歳最優秀馬  カネマサコンコルド(北海道・堂山芳則)
・サラブレッド3歳最優秀馬  マグニフィカ(船橋・川島正行厩舎)
・ばんえい最優秀馬  ニシキダイジン(ばんえい・槻舘重人厩舎)
・最優秀短距離馬  ナイキマドリード(船橋・川島正行厩舎)
・最優秀牝馬  ユキチャン(川崎・山崎尋美厩舎)
・最優秀ターフ馬  該当なし
・ダートグレード競走特別賞馬  スマートファルコン(JRA・小崎憲厩舎)
・特別表彰馬  コスモバルク


表彰者の部門
表彰者部門では、川島正行調教師、戸崎圭太騎手はじめ2010年を象徴する豪華な顔ぶれ。
ここからは記者会見、祝賀会会場で取材した表彰者の喜びの声となっています。


表彰者のコメント
最優秀勝利回数調教師賞
田中 守 調教師(高知)
Q 年間238勝で全国リーディング。受賞された今のお気持ちは?
A 正直、この会場にくるまでは受賞した実感がなかなか沸いてこなかったんです。こうやって会場に入って改めて偉大な賞を受賞できたんだなぁと感じています。嬉しいです。

Q 特に努力されていることはありますか?
A 当たり前のことですが、馬の体調管理には特に気をつけています。オーナーやスタッフの理解があったのがこうやって結果に繋がってくれたのだと思います。

Q 角田輝也調教師の持つ日本記録(239勝)更新に大晦日の時点であと4勝まできていましたが、意識はされていましたか?
A 周りの方々から記録に迫っていることは聞かされていましたが、特別意識はしていませんでした。それでも大晦日は少し気になってしまいましたね。

Q 高知で年間14の重賞が行われて、うち6勝。印象に残るレースは?
A 高知県知事賞、二十四万石賞、そして第一回で行われた福永洋一記念を勝てたのは嬉しかったです。

たくさんの報道陣のフラッシュを浴びて緊張しているご様子の田中守調教師。


最優秀賞金獲得調教師賞
川島 正行 調教師(船橋)
Q 6億5935万7千円、地方競馬レコードでの受賞おめでとうございます。
A 嬉しいですね。1頭1頭、そしてスタッフが一丸となった結果だと思います。

Q 重賞9勝については?
A 交流GTを2勝できましたが、中には悔しいレースもありました。フリオーソはJBCの時は正直今イチのデキだったので、最高の状態で送り出せた東京大賞典を取りこぼしてしまったのは悔しかったね。

Q ここまで管理馬が走るのには、何か秘訣があるのですか?
A いいスタッフに巡り会えましたし、そのスタッフ達が強い馬にも出会って更に磨きをかけてくれるのが大きいです。

Q ここからは少し管理馬のお話を…フリオーソについて
A 状態のわかりやすい馬だね。1・2着に好走する時は、レースの日の朝馬房に顔を出すと必ず寝ている。凄い馬だよね。昨年の東京大賞典の朝も寝ていたんだけどね。今後の予定についてはオーナーの希望もあり、JRAのフェブラリーSを視野に入れているけど、個人的にはドバイに挑戦したい気持ちもあるからね。できるだけ、地方のレースに出走してファンの皆さんの前で強いフリオーソを走らせてあげたい。

Q マグニフィカについて
A 現在は北海道へ放牧に出しています。JDD後のレースぶりがどうも今ひとつだからね。この休養がいい方に向いてくれればと思っているよ。

Q ナイキマドリードについて
A 本当であれば船橋記念を勝ってここにという気持ちがありましたが、スタートでのミスが大きかったね。今後はスプリント路線に拘らず、マイルくらいのレースも視野に入れてローテーションを考えているよ。

Q クラーベセクレタについて
A 牝馬では抜けた存在だと思う。調教などでもムダな力を使わないし、反応もいい。昨年末の東京2歳優駿牝馬も自信を持って送り出せたよ。トライアルのユングフラウ賞から桜花賞の予定です。

Q 最後に今年の抱負を聞かせてください。
A 昨年は取りこぼしが多かった。勝率3割、連対率5割を目指したいし、勝率では出川(克己)調教師というライバルもいるからね。船橋にはいい馬がたくさんいるので、主催者にはファンの方々にもっとアピールしてもらって、盛り上げて欲しいね。


最優秀勝利回数騎手賞、最優秀賞金収得騎手賞
戸崎 圭太 騎手(大井)

Q 今のお気持ちを聞かせてください。
A 地方の勝利数だけでは山口勲騎手に抜かれていたので、受賞できないと思っていましたが、ダブル受賞でこの場にいられて嬉しいです。

Q 南関東では4場全てでリーディングです。昨年を振り返ってください。
A 自分の目標としていた数字とはかなりかけ離れていたので、数字に関しては正直納得していないです。それでも4場全てで1位になれたのは、関係者の方々からいい馬に乗せてもらえたからだと思っています。感謝しています。

Q 騎乗する際に気をつけていることはありますか?
A その馬の気持ちを一番に考えて、気持ち良く走らせてあげることですね。

Q 昨年は武蔵野SでJRA重賞も勝ちました。騎乗も増えてきましたが、JRAへの思いを聞かせて下さい。
A 南関東の競馬場にはない芝のレースがありますし、個人的にもいい経験になっています。今後も機会があれば数多く騎乗させてもらいたいです。

Q 最後に今年の目標をお願いします。
A 昨年は取りこぼしが多かったので、ひとつひとつのレースを大事に乗って、その馬にとって最高のレースをさせてあげたいですね。そしてたくさん勝ちたいです!


最優秀短距離馬 ナイキマドリード
川島 正太郎 騎手

Q 受賞おめでとうございます。
A このような名誉のある賞の主戦を務められて嬉しいです。

Q ナイキマドリードのいいところを教えて下さい。
A 毎回全力を出し切って走ってくれる。素直で真面目な馬です。

Q 重賞初勝利となったオーバルスプリントを振り返ってください。
A JBCスプリントA着の後だったので、人気も集めてプレッシャーもありましたが、負けられないレースだと思っていました。勝てて嬉しいです。

Q 今年の目標を聞かせてください。
A 1鞍でも多く競馬に乗る機会を増やしたいです。そして昨年以上の成績を残したいです。

当日の最終レース後に駆けつけて授賞式に参加してくださいました。
その後の会見にて、「トロフィーを前に出して下さい」との呼びかけに喜び一杯の撮影でした。
(左から、川島正太郎騎手、川島正行調教師、戸崎圭太騎手)


最優秀勝率調教師賞
出川 克己 調教師(船橋)


Q 1998年の最優秀調教師賞以来の受賞。昨年を振り返って?
A ご無沙汰ですね。勝ったレースよりも負けたレースの方が印象に残っています。まだまだ負けているんだなと感じているよ。

Q 勝率36.1%。6着以下より1着の回数が多く非常に優秀な数字ですが、普段から心掛けていることはありますか?
A 馬なので悩むことの方が多いですが、その悩みをひとつひとつ解消して悩みがなくなったら出走に踏み切ることを心掛けています。目標は勝率100%です。

Q 有力馬の予定を聞かせて下さい。
A ディアーウィッシュは2月の報知GPカップ。ザッハーマインはひと息入れて3月の大井マイルGPの予定です。

Q ザッハーマインについて先生の印象を教えてください。
A 牝馬ながらどっしりしていると言いますか、物怖じしないですね。他の馬たちに比べても少し賢いところがあるような気がします。全部とは言えませんが、どっしり構える面というのは意外とオープン馬に共通しているんですよね。順調にいけば今年新設された11月のJBCレディスクラシックが最大の目標になると思います。

Q 今年の目標を。
A 馬第一で今年も頑張りたいです。


特別賞
藤本匠 騎手(ばんえい)


デビュー28年目。1995年から16年連続で年間100勝以上挙げるなど、毎年のようにばんえいリーディングを争う活躍。昨年7月には通算3000勝を達成。ばんえい競馬の騎手としては史上2人目の快挙となり受賞となった。

Q 受賞おめでとうございます。
A このような賞を頂けて、身の引き締まる思いです。

Q これでまでの騎手人生で大変と思ったことはありますか?
A 好きでやっているので、特に辛いと思ったことはないですね。

Q 思い出のレースを教えて下さい。
A サカノタイソンが勝ったばんえい記念ですね。プレッシャーもあったので、嬉しかったです。

Q これだけの勝ち星を挙げる秘訣はありますか?
A 一生懸命稽古をつけて、関係者の方々から信頼を得ることだと思います。

Q 「ミスターばんえい」と呼ばれた金山明彦元騎手の3299勝が視野に入ってきましたが、新記録更新に向けてはどう考えていますか?
A 金山騎手は兄弟子なので、是非とも越えたい数字ですね。

Q 今後の抱負をお願いします。
A 記録の更新も目指しますが、現在ばんえい競馬は大変な時です。ばんえい競馬が北海道の地にしっかり根付くように、僕らも頑張っていきたいと思っています。


笑顔が素敵な出川克己調教師(左)と優しい顔の藤本匠騎手(右)
南関東でもばんえいでも馬を大切に思う気持ちは変わりません!



最優秀勝率騎手賞
赤岡 修次 騎手(高知)

Q 2年連続の受賞おめでとうございます。
A ありがとうございます。2年連続意識はしていました。40%を狙っていたんですけど、最後伸び悩んでしまいました。今年はいい馬に乗せてもらえましたし、チャンスを生かせたと思います。

Q 勝利数も7月中旬まで全国リーディング、最終的には全国3位。高知14の重賞のうち8勝も凄い数字ですね。
A 高知は開催日数の関係や夏場に約1カ月競馬がない時季があります。今年は騎乗停止もあったので、惜しかったと思っています。重賞だからといって緊張しないように、その馬の持ち味を引き出せるように気をつけています。それでも福永洋一記念の時は少し緊張しました。第一回でしたし、JRAの福永騎手との縁もあって実現したレースだったからね。勝てて嬉しかったです!

Q 今年の目標は?
A もちろん3年連続を狙います! 応援よろしくお願いします。


「2年連続の受賞ということでVサインを」とのお願いに万遍の笑みで答えてくれました。


殊勲騎手賞
山口 勲 騎手(佐賀)


昨年の地方競馬全国リーディング。最多勝はJRAでの成績も合わせるため戸崎騎手が受賞したが、南関東、東海、兵庫と比べ開催日数の少ない九州地区所属騎手が地方競馬全国リーディング獲得は1985年の有馬澄男騎手以来25年ぶりの快挙となったため、殊勲騎手として受賞

Q 受賞のお気持ちを聞かせて下さい。
A 初めてのGP受賞なので、光栄に思っています。

Q 生涯の年間最多勝での全国リーディングですね。
A 大きな怪我もなく年間通して騎乗できたのが、大きいと思います。

Q 勝率31.5%は赤岡騎手に次ぐ2位ですね。
A あまり意識はしていませんでした。自然と結果がついてきた感じですね。

Q 昨年は通算2500勝もマークしました。
A 2000勝の時の方が嬉しかったので、ここは通過点だと思っています。3000勝を目指したいです。

Q 新人賞受賞の清水騎手にアドバイスはありますか?
A 今は何でも吸収する時季だと思います。たくさん騎乗して成長していって欲しいと思います。

Q 最後に今年の抱負を。
A このような賞を頂いたので、今後は周りを意識し過ぎず、より一層その名に恥じないレースをして努力していきたいと思います。


優秀新人騎手賞
清水 裕一 騎手(佐賀)


Q 受賞おめでとうございます。
A 自分が獲れるのかなって思っていたので、嬉しいです。

Q デビュー戦と初勝利までを振り返ってください。
A 900Mのレースだったので、がむしゃらに追っていました。気がついたらゴールでした。初勝利まで82戦を要しました。それまで期待に応えられず、辛い期間が続きました。

Q 昨年は41勝で一気にブレイクしました。何が変わったと思いますか。
A 冷静に展開を考えられるようになったことが大きいと思います。

Q 先輩、山口勲騎手の凄いと思うところは?
A 自分の乗りこなせない馬を簡単に乗りこなしてしまうところ。仕掛けのタイミングなども勉強になるので、目指す存在です。

Q 最後に今年の目標を。
A 通算100勝と重賞を勝ちたいですね!


全国リーディングの山口勲騎手(右)。3000勝に向けての意気込みが感じられました。
先輩とツーショットでハニカミ顔の清水裕一騎手(左)。



優秀女性騎手賞
山本茜 騎手(愛知)


Q 昨年は重賞2勝。受賞おめでとうございます。
A 久しぶりの受賞なので、嬉しいです。重賞については、ミサキティンバーは勝てるレースで勝てなかったりしていたので、重賞は気持ちで変わるんだなと。勝ちを意識し過ぎずに乗れたと思います。マコトバンクウはゲートに癖のある馬だったので、発馬に気をつけました。昨年は重賞を勝てたのが嬉しいです。

Q レディースジョッキーズシリーズについては?
A レースに対する自分の欠点がわかり勉強になることの方が多かったです。ソツなく乗ることに気がいっていました。もっと勝ちにこだわれば良かったと思いました。

Q 今年の目標は?
A 今年も重賞を勝ちたいですね。特に東海ダービーを獲りたいです!


優秀女性騎手賞
別府 真衣 騎手(高知)


Q 5年連続の受賞おめでとうございます。
A 例年以上に嬉しいです。山本騎手が重賞を勝っていたので、私も今年重賞を勝てて嬉しかったですね。
Q 騎乗の際に心掛けていることはありますか?
A 馬によって性格が違うので、馬に逆らわず呼吸を合わせて騎乗することです。実際にはマダマダだと思っています。

Q レディースジョッキーズシリーズは最終ラウンドで失速してしまいましたが、振り返って頂けますか?
A 途中まで首位だったんですけどね…。最後で集中力が切れてしまいました。

Q 今年はどんな年にしたいですか?
A いろいろな意味で挑戦の年にしたいです。海外でも騎乗してみたいという気持ちもあるので、今年はいろいろとチャレンジしたいです。


インタビュアーに「お二人ともとっても仲が良いんですね」と言われ
照れ笑いの山本茜騎手(左)と別府真衣騎手(右)



ベストフェアプレイ賞
田中 学 騎手(兵庫)
 ※田中騎手は欠席されました。


最優秀牝馬 ユキチャン
山崎 尋美 調教師


Q 先日、引退が発表されましたが、一番印象に残ったレースを教えて下さい。
A 転厩2戦目のクイーン賞ですね。そもそも、JRAであれだけ人気のある馬がはたしてウチの厩舎にくるのだろうかと最初はドキドキでした。ウチの馬房に入った時にようやく安心しました(笑)。緒戦のTCKディスタフは斤量を背負わされて苦しいレースになりましたが、力は見せてくれました。実績から勝って当たり前というプレッシャーもあったので、ひとつ勝たせることができてホッとしました。

Q 引退については?
A ちょくちょく北海道に様子を見に行っていましたし、2月のTCK女王盃を目標に調整していた矢先だったので、僕も昨年末に引退の話が出た時は急だったのでビックリしました。よく頑張ってくれたと思います。

Q ユキチャンの子供については?
A 機会があれば管理したいですね。

Q 最後にユキチャンに贈る言葉をお願いします。
A 地方の環境にもうまく対応してくれましたし、ファンの方々にも愛されたアイドルホースだと思います。タイトルも獲ってくれましたし、本当にウチの厩舎に来てくれてありがとう。そう言いたいですね。


「ユキチャンと出会えて本当に良かったです」
ユキチャンに対する愛情の強さを感じさせてくれました。



☆番外編1☆

今回の授賞式で関係者にトロフィーを授与する方の中にいたのが、昨年引退された桑島孝春元騎手。

Q 現役の頃は目指すべき舞台、受賞する舞台でした。今年は参与として授与する側に立ちましたが、感想を聞かせてください。
A 今までと違う立場で舞台に上がったから、ちょっと複雑だよね(笑)。

Q 今後については?
A 今年からは地方競馬教養センターで後進の指導も行っていく予定です。今年に入ってから南関東でも落馬の事故が多いのは気になるし、今までは見られる側だったけど、今後は見る立場だからね。経験なども踏まえて伝えていきたいと思っているよ。


立場が逆転した桑島孝春元騎手。今後もご活躍をお祈りいたします。


☆番外編2☆

ダートグレード競走特別賞馬 スマートファルコン


ダートグレード競走特別賞馬に選ばれたJRA馬のスマートファルコン。
関係者の方々が授賞式に来てくださいました。