ケイシュウの紙面でも皆さん目にする“外厩調整”や“今日の外厩調整馬”の文字。そもそも外厩って何?皆さんどんな所で外厩馬が調整されているかご存知ですか?
今回大井取材班の高橋、藤田、岩崎の3人が代表的な外厩施設のひとつである、境共同トレーニングセンター(以下境トレセン)へ取材に行ってきました。施設など含めて紹介したいと思います。

今回、境トレセンについて施設の案内をしてくれた澁谷武久さんです。(写真右)

澁谷さんは境共同トレセンの代表取締役をされている方で、元高崎競馬調騎会の会長だった方です。

境トレセンは群馬県の伊勢崎市にあります。平成18年3月から外厩制度がスタート、初出走は同年9月の開催からです。これまで南関東では所属競馬(大井は小林分場を含む)以外の場所から競馬を使うことはできませんでした。この制度がスタートすることによって、主催者から認定を受けた施設から本場の厩舎を経由せずに直接競馬を使うことができるようになりました。

ちなみに取材に行った日は大井競馬場から車で行ったのですが、約2時間程で行けました。小林分場と同じように競馬の当日に輸送してレースに臨んでいます。

もともとは高崎競馬場のトレセンとして使われていた場所で「南関東の外厩馬房としての機能の他に、休養馬の育成や若駒の馴致・育成なども行っています。現在、南関東の認定厩舎の馬は約80頭います。ひと開催平均で50頭位はレースを使っています」と澁谷さん。現在では約100人のスタッフさんがいるそうです。そのスタッフの多くは高崎・足利・宇都宮・新潟など廃止になった競馬場で調教師や厩務員、騎手の方々が中心になっているそうです。

ここからは施設の紹介をしたいと思います。


馬場は1周1200Mです。
この日は左回りでしたが、南関東の開催場所に合わせて右・左をチェンジしているそうです。
※ちなみに大井競馬場の外回りが1周1600M、小林分場が1周1100Mです。

イメージ的に冬場は凍結しそうな感じですが、「不凍液を使っているので、使えなくなるほどの凍結はありませんよ」と澁谷さん。

これは練習用のゲートです。


この写真のゲートとは別に、12頭入ることのできる模擬レース用のゲートがあります。そのゲートは高崎競馬が行われていた当時、実際に使われていたゲートなので、2歳馬のデビュー前は本番を想定した練習も可能です。

厩舎ですね。中にもお邪魔させて頂きました。




写真を見ての通り、厩舎の外に看板が掛かっているので、南関東の外厩認定を受けている馬を預かっているのがひと目でわかりますね。

何やら怪しげなマシーン…ってこれはウォーキングマシーンです。


競馬場や小林分場には無い施設です。境トレセンには2台設置されていて、1台で最大6頭の馬が運動できます。一回入ると40分くらいは運動するそうです。


気性のうるさい馬でも、ほとんどの馬が運動してくれるそうですよ。
これで厩務員さんは運動に使っていた時間を厩舎作業にあてることができて効率的ですね。間近でパチリ。頑張れ〜!


もちろん、獣医さんや装蹄師さんもいますよ。少し場所が離れているだけで、競馬場の雰囲気とほとんど変わりません。

と厩舎内を歩いていると…

矢吹騎手ではないですか!!

取材に行った日は大井競馬場は休日だったのですが、佐野調教師とともに休日返上で攻め馬をつけにきたそうです。(写真の馬は佐野厩舎のハチェット号です)

佐野先生は外厩制度を利用していませんが、このハチェットは境トレセンで休養中とのことです。このように境トレセンに預けて調教を積み、それから競馬場の厩舎に入厩させる。このように育成施設として利用されている方も多いそうです。

矢吹騎手に境トレセンの印象を聞いてみました。

「大井と比べると馬場は小さいですけど、馬の数が少ないので調教はしやすそうですね。大井では角馬場でしか調整できなかった馬にも乗ったのですが、ちゃんと本馬場で調教できましたよ。輸送など課題はあると思いますが、軌道に乗ってくれば今以上に活躍馬が増えると思います。今回は佐野先生の人脈などもあり連れてきて頂いたのですが、また機会があれば積極的に乗りにいきたいですね」とのこと。

と話を聞いていると…

栗田裕光調教師もいらっしゃいました!

ご存知の通り07年の大井リーディングトレーナーで、外厩の活躍馬も多いですよね。

「きっかけは高崎競馬場が廃止寸前の頃、徐々に賞金も少なくなり、育成でも休養でもいいから何とか入れてもらえないかと声を掛けられたことです。外厩制度が始まって預ける機会が増えることによって、多角的なモノの見方ができるようになったし、大井と境トレセンで調教ができるようになってパターンも増えましたね。ただ、ここは向く馬と向かない馬がいるかもしれないですね。07年の大井リーディングトレーナーになれましたし、更に勝ち星を増やしていくにはとても大切な場所。今後は規模が大きくなっていくと思いますし、私にとってはここも厩舎の一部です」

と栗田先生にもお話を聞くことができました。ありがとうございました!

最後に澁谷さんから今後の目標なども含めて話を聞くことができました。

「外厩制度の開始から08年9月で丸2年経ちますが、年々成績が良くなっているのは嬉しいことです。まだ計画の段階ですが、将来的には坂路コースを設置したいと考えています。高速道路など周辺環境は年々良くなっているので、美浦方面との行き来も大幅に楽になると思います。預託料の面からも馬主様にとって十分メリットのある場所です。今後、活躍馬が増えるよう今まで以上に精進していきたいです」と今後の発展に期待を寄せていました。ケイシュウ紙面上では“今日の外厩調整馬”という形で当日出走予定の馬を掲載していますので、外厩馬の活躍にも今後注目してみて下さい。